SEやプログラマが初心者からレベルアップするために必要なスキルの1つが見積りスキルだと考えています。
システム開発は直感で思うより多くの工数が必要になることが多いです。
この時、顧客や上司になぜそれだけの工数が必要かを論理的に説明できないと、実際に必要な工数を与えてもらえず、期限に間に合わなかったり、コスト超過になる等の問題が発生します。
精度良く・論理的に見積りを行えるということは、自分の身を守るためにも必要な技術です。
このため、SE・プログラマは見積りスキルを身に着けておくことをお勧めします。
書籍「ソフトウェア見積り 人月の暗黙知を解き明かす」
本書はソフトウェア開発に関して、米国での開発現場の事例を知りながら、見積りスキルを高めることができるため読み物としても面白いものです。
1,2社でしか働いたことのない人にとっては、他社での失敗の事例や教訓を知れるという点でもお勧めできます。
特に、設計やプログラミングをする人で、下記のことに当てはまる人には一読をお勧めしたいです。
- 作業計画から遅れてしまうことがよくある
- 打ち合わせなどで「これはどの位でできる?」と聞かれると、その場ですぐに見積りを回答してしまう
- 見積りをするときに、コードのライン数だけを指標にしている
本書を読んで有用だと感じたのは、見積りをする際、やってしまいがちな思い込みに気が付くことができたことです。
例えば、見積りをする際に実行予定の作業がおおよそは上手くいくだろうという楽観的な前提を置いてしまうことがあります。
楽観的な前提を置いてしまいがちであることに対し、本書では
300件のソフトウェアプロジェクトの調査から、開発者の見積りには20~30%の楽観的要因が含まれる傾向がある
等のデータ付きで解説をしてくれており、確かに自分もそうだなと思いながら読むことができます。
また、見積りに関して悪い点を指摘するだけでなく、現実的な改善方法についても記載されています。
例えば、コードのライン数だけを指標として見積りを行うことに対して、下記のような話の展開をしたうえで、複数の見積り方法を解説してくれているため、納得して理解できます。
野球で首位打者を決定するときでさえ、打率・ホームラン・打点・その他の要因を考え、各数値が何を意味するかについて議論する。
たった1つの指標では首位打者を決めることさえできないのに、どうしてソフトウェアの規模のような複雑なものを(ライン数という1つの指標で)測定できると期待するのだろうか?
2,3時間で読めるほどに分かりやすい本であり、現場で即使える実践的な内容なので、費用対効果が高い1冊です。
書籍「システム開発のための見積りがすべてわかる本」
本書は見積りに加えて、システム開発の上流工程について知りたいという人にお勧めできます。
若手の内は、役職者の人が客先と調整をし、ある程度段取りがついた状態から仕事を依頼されることが多いのではないでしょうか。
本書を読めば、開発の現場担当者としては見えにくい、下記の事も理解することができます。
- 提案時の業務の流れ
- プロジェクトを円滑に進めるために、初期段階で顧客と調整すべきこと
- 開発業務以外に、見積もっておくべきコスト
- 金額、工数の調整について
私は、システム開発には10年ほど携わっていましたが、本書に記載されている「工数(時間)は削れない」というのは強く認識しておくべきであることを再確認できました。
実際に、工数や工期の短縮要求は顧客や上司から求められる事が多く、頭を悩ませる問題の1つです。
鬼の様な上司は「人数を2倍にすれば、工期は半分になるでしょ」という事を平気で言ってきます。
本書には、工期短縮率が30%以上になると急速にプロジェクトの失敗率が上がるといった事も紹介されており、覚えておくと実際の現場でも使える知識が紹介されていました。
本書では、簡単なシステムを例に、実際に見積り作業の解説を行っています。
実際に見積りを行った例をもとに解説してくれているため、経験の浅いSEでも実際の業務で行われる見積りがどんな具合かをイメージしやすいです。
見積りを通じて上流工程についても知れるので、1冊で2度タメになる本です。
書籍「システム開発のためのWBSの作り方」
システム開発のためのWBSの作り方(日経BP Next ICT選書)
WBSとはWork Breakdown Structureの略で、ITプロジェクト等の目的を達成するために必要な作業を漏れなく洗い出し、各作業の依存関係を見える化したものです。
精度の良い見積りや、実現性の高い計画を作るには、漏れなく整理されたWBSが必要です。
というのも、WBSを作成した段階で作業に抜けがあると、抜けた作業については見積もられることも、計画を立てられる事もなく、後の工程で問題となってしまう可能性が高いためです。
本書を読めば、見積り精度・計画精度を高めるために必要な、漏れのない・整理されたWBSを作成するためのポイントを知ることができます。
本書では、要件定義から現地導入・運用まで、システム開発の最初から最後までのWBS作成のポイントを解説してくれています。
また、作業を洗い出すための知見の解説だけでなく、プロジェクトの目標を考慮してWBSを作成した方がよいという解説も参考になります。
例えば、戦略的に取り組みたい目標(今後のために特定の技術に関する識者を増やしたい等)がある場合に、その目標を達成できるようにWBSを見直すといったことです。
巻末に、実際に筆者(日立出身の方)が使っていたテンプレートとして「現場で直ぐに使えるWBSテンプレート(作業一覧)」というのがあります。
他社の人が使っているWBSというのも中々見る機会が無く、自社で作っているWBSと比較することで、自社を客観的に評価することができます。
実際の現場でWBSのコツを教えてもらえることは稀である、大体の人がフィーリングでやっているため、WBSの作成技法を学べるという点で有用な一冊です。
以上3冊紹介させて頂きました。
見積りは計画スキルに結び付くものであるため、将来的にプロジェクトマネージャになりたい・IPAのプロジェクトマネージャ試験やPMPに挑戦したいという人は読んでおくと参考になるはずです。
ご参考になりましたら幸いです。
以上
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