2010年位からか、テレビで「日本は素晴らしい」といった内容の番組を見かける機会が増えた気がします。
「日本は素晴らしい」という意見の人もいれば、「日本は生きづらい」と感じる人もいるのではないでしょうか。
書籍「菊と刀」は米国人が客観的に、日本人とはどういった性質をもった民族かを分析した書籍であり、私たち日本人が自分を客観視するために役立つ内容です。
書籍「菊と刀」の概要
本書の著者のルース・ベネディクトは、米国の文化人類学者であり、太平洋戦争中に諜報員として日本の調査を行っていた人物です。
本書が出版された1946年は、日本が太平洋戦争で米国に敗北した次の年であり、この年にルース・ベネディクトが戦時中の頃から日本について調査していた資料を本としてまとめる形で出版されました。
本書は戦後にGHQが日本を支配するための資料としても使われたと言われており、我々日本人の歴史に深く関わる本と言えます。
我々の親・祖父母世代の人がどういう価値観で生きていたかを知るには有用な書物であるため、日本人ならば一読しておきたい書物です。
米国人にとって日本人は理解に苦しむ民族だった
米国人にとっては日本人は相当に理解に苦しむ民族であった様です。
というのも、戦争中は竹槍を持ってでも死ぬまで戦うという姿勢であったのに、終戦後は180度態度が変わり、アメリカ人に対して友好的に接してきたためです。
他の国では、終戦後もゲリラ活動のようなことが行われるのが普通でしたが、日本ではそうした活動もほとんどなかったそうです。
このため、アメリカ人としては、あの戦闘狂のような日本人が、終戦後に直ぐに友好的になったのが不思議で仕方がなかったという背景がありました。
菊と刀というタイトルについて
「菊と刀」というタイトルは、日本人の二面性を表したタイトルです。
本書の冒頭では日本人について以下の記載があります。
日本人は攻撃的でもあり、温和でもある。
軍事を優先しつつ、同時に美も追及する。
思い上がっていると同時に礼儀正しい。
頑固でもあり、柔軟でもある。
従順であると同時に、ぞんざいな扱いを受けると憤る。
節操があると同時に二心もある。
勇敢でもあり、小心でもある。
保守的であると同時に、新しいやり方を歓迎する。
他人の目をおそろしく気にする一方、他人に自分の過ちを知られていない場合でもやはり、やましい気持ちに駆られる。
タイトル中の「菊」とは温和さや美を追求する特性、「刀」は攻撃的な特性を表すものとして使われています。
日本人はメディアで言われるほど温厚な人間ではない
著者は、恩、孝、義理、恥、鍛錬、子供の育ち方といった観点から日本人について分析をしています。
恩や孝という観点から見ると、日本人の良くない面にも触れられています。例えば、本書には以下の記載あがります。
年若い嫁は表面上、あくまでも従順である。
しかし代が代わると、この穏やかで可愛い女性たちは、かつて自分の姑がそうだったように、厳しくて口やかましい姑と化す。
年若い嫁は、人を責めるような言動を露わにすることは許されないが、だからといって、正真正銘の温和な人間になるわけではない。
後半生を迎えると、いわば、それまで溜まった憤懣(うっぷん)を同じ分量だけ自分自身の嫁にぶつけるのである。
姑による嫁いびり、先輩による後輩のかわいがり、こうしたものに見られる様に、日本には教育にみせかけた陰湿ないじめが伝統的に行われてきたという歴史があります。
日本人の長所について
その一方で、鍛錬という観点から、日本人の特異な勤勉さを捉えています。
禅宗をおのれのものとしたのは、他でもない、日本の武士であった。(中略)
武士が白兵戦にそなえて心身を鍛える目的で(禅の)修行を積むこともある。
こうした例は、よその国ではほとんど見かけられない。
しかし、日本では禅宗が勢力を伸ばし始めたころからずっと、それが常態だった。(中略)
禅によって鍛えられたのは、武士、為政者、剣客、学生などさまざまである。
その目的は、いたって日常的な目標を達成することに置かれていた。
日常的な目標のために、明鏡止水の境地を求めて鍛錬を行うのは日本人的な行いであり、外国ではあまり見られな事だそうです。
おわりに
本書は、日本人の良い面、悪い面をバランス良く吟味した書籍としており、我々がどういった人間なのかを客観的に捉えるのに役立ってくれると考えています。
日本人が自分達についての理解を深めたい、という場合に役に立つ書籍と言えます。
ご参考になりましたら幸いです。
以上
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