池上彰氏と言えば、「池上先生」という通称でお馴染みのジャーナリストです。
政治・経済などの番組に多数出演し、著書は100冊以上あります。
さぞかし、若い頃から順風満帆なキャリアを築いてきたのだろうと思っていましたが、実はそうでもありません。
書籍「知の越境法~「質問力」を磨く~」では、そんな池上先生について以下の2つを知る事ができます。
- 多分野に渡る知識をどうやって身に付けて来たか
- 池上先生の自伝的内容、NHKでどの様な経歴を積んで来たか
池上先生も置かれた場所で咲いた人
人事がドヤ顔で紹介してきた本
私が会社に入社した後、新人研修の際に人事の偉い人がドヤ顔で出してきた本があります。
本自体は悪いとは思いませんが、寒気がしたのを覚えています。
- 置かれた場所で咲きなさい
- その場所、その場所で頑張っていれば、その経験が後で役に立つ
こうした話はしばしば聞きます。
スティーブ・ジョブズも、かつて興味本位で出席していたカリグラフィー(文字を美しくみせる手法)の授業が、後にMacで役に立ったという話をしています。
成功者バイアス
成功者バイアスといい、成功した人の話は伝わりますが、失敗していった人たちの話は伝わり難いという法則があります。
現実には、置かれた場所で咲こうと頑張ったが、結局は満足行く結果は得られなかった、という人の方が多いのではないでしょうか。
池上先生も置かれた場所で咲いた系の人
書籍「知の越境法」は池上先生が「置かれた場所で咲いた」という内容でもあります。
池上先生は以下のような背景を持っています。
- 元はNHKの解説委員を希望していた
- 人事に従うまま複数の地域・部署で仕事をしていた
- 結果、仕事で専門分野は持てなかった
- 解説委員には専門分野が必要なため、配属はできないと告げられる
- 「多分野にわたる知識」に「分かり易く解説できるスキル」を掛け合わせて、現在のキャリアを築いた
自分の希望とは異なる人事ながら、その場その場で頑張る事で成功したという「置かれた場所で咲いた」人です。
NHKに就職されていたので、順風満帆な人生を送ってきた方だと思っていましたが、そうでもありません。
ただ、沢山いる頑張っている人の中で、たまたま成功したのが池上先生だったという可能性もあります。
そうした、運の要素が絡む、再現性の無い話をされてもあまり参考にはなりません。
その逆に、真似できる要素は何か?を探した方が参考になります。
本記事では、幸運な巡り合わせといった点を除く、実際に真似できる・参考になりそうな点を紹介します!
池上先生はどんな風に勉強したか?どんな事を勉強すべきか?
池上先生の守備範囲
本書の中で勉強したと記載のあった分野は以下です。
- 刑法、刑事訴訟法、法医学
- 気象災害、地震、津波、火山
- 消費者問題
- HIV
- 教育問題、教育改革を巡る省庁のバランス、大学入試、いじめ問題
- 現代史、中国・台湾、アジア情勢、中東情勢
- 金融論
広範囲であり、かつ、隣接していない分野もあり、本当に色々な分野の勉強をして来た方だと分かります。
好きな分野を勉強する
もともと好きな分野を中心に学びますから、苦労だとか、辛いとか考えたことはありません。 (知の越境法 池上彰)
「好きな分野」を中心に勉強してきたと言われていますが、その割には、勉強してきた分野は多岐に渡っています。
これだけ多くの分野を「好きな分野」と言えるのは、1つの才能だと思います。
好きな分野が多岐に渡るという点で、既にそこら辺のサラリーマンとは一線を画しています。
「好きな分野を勉強する事」と同じくらい「好きな分野を多く持つ事」が重要なのではないかと考えさせられます。
これだけしか興味がない、という一途さも一長一短ですね。
本書の中で「リベラルアーツ」の重要性が説かれています。
リベラルアーツとは、人文科学・社会科学・自然科学の基礎分野を横断的に教育する科目群・教育プログラムの事です。
専門分野に固執せず、横断的に多分野を学んでおくことで、興味の範囲を広げる事ができると考えます。
この点において、社会人になってからでも様々な分野の本を読むのは、自分の興味の範囲を広げという意義があります。
役に立つ事・最先端の事を勉強する必要はない
本記事を読まれている方には、ひょっとしたら、最先端の技術や分野に触れている部署の人を羨ましく思っているかもしれません。
そんな方の参考になる話もありました。
MIT(マサチューセッツ工科大学)で印象的だったのは、こちらが当然のように、「最先端のことを教えてらっしゃるんでしょうね」と先生方に尋ねたところ、「いや、そんなことはありません」という答えが返ってきたことです。
「いま最先端のことは4年程度で陳腐化します。すぐに陳腐化する事を教えても仕方ありません。(中略) すぐに役立つものは、すぐに役立たなくなります」 (知の越境法 池上彰)
最先端の物に触れられないからと言って腐る必要はありません。
流行りを追う必要はなく、自分の好きな所から始めて、その分野を深めて行った方が、長期的に役立ってくれると言えそうです。
異なる意見・異なる視点・複雑な物から逃げない
自分にとって心地いい記事だけを読みたい。自分が理解できることだけを読みたい。世界が複雑化し、物事の白黒が簡単にはつけられなくなってきているだけに、人は複雑なことを考えたくなくなっています。 (知の越境法 池上彰)
「郵政民営化」「政権交代」等の分かり易いキャチコピーを用意して、大衆の心を掴んだのは、こうした「複雑な事を考えたくない」という心理を利用したものです。
人は複雑な物を避けたいという気持ちがありますが、自分が理解できる事だけやっていては成長するのは難しいです。
池上先生のウリの1つである「分かり易く説明する技術」は、物事の本質が分かっていないと出来ないことです。
逆に、分かり易く説明するために、深く勉強する必要があります。
多くの分野を勉強したと言っても、分かり易い部分だけササッと勉強しても役にたつものではありません。
難しそう、複雑そうな物に出会った時がチャンスですね!
まとめ
書籍「知の越境法」を読んで参考にしたい点は以下です。
- 広範な分野に興味を持つこと
- 最先端を追うより、自分の好きな物・興味のある事を勉強すること
- 複雑な物から逃げないこと
直ぐに役立ちそうな経験が積める人事の方が嬉しいですが、そうでなかったとしても、自分の好きな範囲を勉強していこうと思います。
ご参考になりましたら幸いです。
以上
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